武道ライター山里栄樹のブログ

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山里のお薦め武道アクション映画

連日の猛暑の中、依然として新型コロナウイルス感染拡大も猛威を振るっております。いろいろな意味で“炎上の夏”なのでありますな‥

 さて、前回の「山里、大好きな武道武術アクション映画を語る」が好評でしたので、今回は山里の映画評ということで3作品の武道アクション映画をご紹介いたします。

 

まずは、2000年に公開された映画『雨あがる』、原作は山本周五郎の時代小説です。NHK大がドラマ『樅木は残った』や映画『赤ひげ』など安定感のある山本周五郎の時代劇映画の一つでありまして、「派手さのない大人しめの時代劇」というイメージが山本周五郎作品にたいする小生の単純な感想なのでありますな。

本作品で主人公の三沢伊兵衛を演じるのは寺尾聡氏。小生には刑事ドラマ『西部警察』で44マグナムを撃ちまくる松田猛刑事のイメージが強く、原作のお人好しの優しい武士というキャラクター設定がしっくりこなかったのでありますが、劇中では見事な殺陣で原作通りの天才剣客を演じきっております。

 なお本作品には、故黒澤明監督の脚色・影響が関わっているということで、確かに随所に往年の黒沢映画の気風を感じることができます。寺尾聡氏の殺陣は、実にシンプルで無駄がなく、武道武術の観点でも理に則った自然な動きといえます。小生、個人的には楽曲『ルビーの指環』以来の快挙なのでありますな~

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www.youtube.com映画『雨あがる』より、寺尾聡の木刀での見事な殺陣シーン
 

次は、実在した中国武術家イップ・マンを主人公としたカンフー・アクション映画『イップ・マン2 葉問』であります。

葉問派詠春拳の宗師イップ・マン(本名;葉継問)は、1950年代から香港を中心に詠春拳の伝承普及に尽力した武術家であり、少年時代のブルース・リーの師匠として知られております。青年期は第二次世界大戦下の激動の中国大陸で過ごし、壮年期から香港に居を移して本格的に武術家として活動、海外の華僑との親交もあり世界的な中国武術の普及に貢献されていたようです。

 本作品では主演ドニー・イェンのほか、カンフーアクション映画でお馴染みのサモハン・キンポーが俳優兼武術指導で出演しております。

ストーリーの舞台は第二次世界大戦終戦直後のイギリス領香港。詠春拳の使い手である武術家イップ・マンは妊娠した妻と子と共に中国大陸内部から移住してきます。知り合いの新聞社編集長を頼って物件を借入して武術道場を開きます。ある日、弟子のウォンが街で洪拳の門下生と悶着を起こして拉致されます。イップ・マンは単身で弟子を拉致した洪拳の門下生らが働く魚市場に乗り込み弟子ウォンを助けだしますが、そこに魚市場経営者で洪拳師範のホン(サモ・ハン・キンポー)が登場。香港武術界の顔役であるホン師範は、イップ・マンに香港の名だたる門派の師範たちと試合を行って自身の実力を証明するよう求めます。さらなるストーリーの展開では、イップ・マンとイギリス人ボクサーとの異種格闘技戦が執り行われ、詠春拳弾幕戦術と言える壮絶な連打技法が炸裂します。

 映画『イップ・マン』はシリーズ化して、『イップ・マン1  序章』2008年、『イップ・マン3  継承』2015年、『イップ・マン外伝 マスターZ』2018年、『イップ・マン 4 完結』2019年と前編・後編・続編・完結編が続々と制作されています。また映画とは別にドラマ化されテレビ配信されるほどの大人気カンフーアクション大作なのですな~

 ハードな武術アクションのなかに、武道武術の師匠としての‟徳”と‟格”というものが見え隠れする大作映画であります。

 

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www.youtube.com映画『イップ・マン2 葉問』予告編

www.youtube.com映画『イップ・マン3 継承』より、イップ・マンのエレベーターと階段での対ムエタイ格闘シーン

 

そして最後は、1979年に制作されマイアミ国際映画祭にも出品された映画『永遠なる武道』であります。映画冒頭では、居合道の達人が真剣で青竹や藁束をスパスパ斬り落とされます。綺麗に切断された切り口からは正確な刃筋が映し出されていました。

また日本最古の武道である相撲を取り上げていて、往年の大人気力士であります高見山が出演しております。このほか、なぎなた道、剣道や柔道といったスタンダードな武道種目もあり、日本武道の映像博覧会といった様相であります。

空手界からは、尚武会の藤本貞治師範がブロック割りなどの圧巻な迫力ある試割りを披露しております。手刀によるビール瓶切りでは、中身の入ったビール瓶を2本並べて置き、1本の瓶首を切ると返しでもう1本を切り飛ばす。刃物で切りとったような実に鮮明な切り口が映し出されております。

合気道界からは、合気道養神館塩田剛三館長が出演、伝説の神業を惜しげもなく披露してくれます。渓流の中をヒラヒラと流れる枯葉の映像とシンクロさせた塩田館長の合気道演武は、禅の境地「不動智」を感じさせる名シーンなのであります。

抜刀道からは、戸山流抜刀術の大家の中村泰三郎師が出演。真剣での組太刀では、迫真の演出で衝撃的なシーンが登場します。さらに、日本武道の象徴ともいえる日本刀の伝統的な製造工程を紹介する映像も導入されており、日本武道が永い歴史のなかで培われてきた伝統文化であることが如実に描かれています。

今は亡き日本武道の大家たちのド迫力の演武映像が凝縮された本作品は、日本武道の凄まじさを肌感覚で伝える貴重なドキメンタリー映画であります。

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www.youtube.com映画『永遠なる武道』概ね全編

 

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